柚槙ゆみ/深雪まゆのブログ

商業番外編から日常のことやイベント参加・レポなど載せていく予定です。

J庭が中止になりとても残念ですね。コロナが憎い! と大声で叫びたいです。

 

さて、新刊は落ちましたが、ペーパーラリーSSをアップしますね。

とはいえ、新刊に付随するサイドストーリーなのでこれだけ読んでも……と思われるかもですが💦

新刊は今月半ば頃に発送できたらと思います。

 

 デスクで仕事をしながら、小春正臣(こはるまさおみ)は壁に掛かった時計に目をやった。


(あ、そろそろかな)


 小春の目の前では社長がうつらうつらと船をこいでいる。今日はそんなに仕事が忙しくなかったので体の疲労ない。しかし事務作業でパソコンの前にいたため、肩は凝り固まっている。首と肩を回すとコキコキと音が聞こえた。
 小春が勤めるのは、社長と二人だけの小さな通販会社だ。事務所にはたくさんの段ボールが積み上がり、さながら倉庫である。扱っているのは大人のおもちゃと呼ばれる類いの商品だ。
 この会社に勤めるようになったのは、別に大人のおもちゃが好きだからではない。リストラに遭い、初めは次の仕事までの繋ぎで決めたバイトだった。
 だが小春は仕事を選んでいられる余裕はなく、社員で採用するよと言われ二つ返事で了承した。結局、この会社に五年もいるのだから、合っていたのだと思っている。
 時計は昼の十二時を少し回っていた。席を立つと、その音で社長が目を覚ます。


「社長、お昼ですよ。いつものおきや食堂ですか?」
「ああ、うん。そうだね」


 寝起きの顔で社長は立ち上がり、背中に孫の手を差したまま腕を上げて伸びをしている。


「小春ちゃんは上に行くの? 今日は確か、宏さん休みだね」
「あ、はい。放っておいたらまたインスタントラーメンでしょうし」


 ふふふ、と社長が笑い、そのまま事務所を出て行った。
 このビルの大家である浅海宏隆(あさみひろたか)は三階に住んでいて、警察関係の仕事をしている。休みは不定期で、休日は小春が昼と夜ご飯を作りに上へ行く。
 この会社に入ったときに「大家の休日食事管理」というのが、なぜか契約条件として記載されていた。世話を焼くのは好きだし料理もできる。なのでその条件はまったく苦ではなかった。
 小春は事務所の冷蔵庫の中から、袋にまとめてある食材を取り出す。豆腐屋で木綿が安くなっていたので、挽き肉と合わせて麻婆豆腐にする予定だ。今は麻婆豆腐の素があるのでお手軽に作れるのである。


(白飯は……まあないだろうな)


 事務所に三合炊きの炊飯ジャーがあり、仕事を始める前に仕掛けておいた。保温状態の炊飯器のコンセントを抜き、それを持ち三階へと上がっていく。
 インターフォンを押そうとしたが、まさかと思いドアノブを回す。施錠はされていなかった。


(ああ、また開いてる。鍵は閉めてって言ってるのに)


 仕事場では有能だと本人は言うが、自宅の玄関さえ鍵を掛けられないのはどうかと思う。しっかりしているようで肝心な部分が緩い宏呂砲亙鬚譴討靴泙Δ个りだ。


「宏呂気鵝繊お昼ですよ〜」

 

 部屋に入ると彼が付けている香水の甘い香水が微かに香る。玄関を入ってすぐ脇にコートハンガーがあり、そこに下がっている宏呂旅いコートから匂いがするようだ。


(宏呂気鵑旅畤紂好きなんだよね)


 体臭と混じった匂いが好きだった。周りに誰もいないのを確認して、鼻を近づけてクンクンと犬のように匂いを嗅ぐ。ふふ、と笑ってそのままキッチンへと向かった。


「宏呂機舛鵝 お昼ご飯はいらないんですか? 今日はあなたの好きな麻婆豆腐ですよ? 辛いの、好きですよね?」


 単身用のちいさなキッチンで、僅かなスペースにまな板を置き、おいしいと評判の豆腐店で買った木綿豆腐を出す。
 声をかけているのに返事がない。恐らくまだ寝ているのだろう。仕方ないな、と思いつつ、豆腐を切るため引き出しから包丁を出そうとした。


「ぴゃっ!」


 背後からガバッと抱きしめられた。思わず変な声が出てしまう。


「……起きてる。なんだその声は」


 寝起きの掠れ声が耳元で聞こえる。ゾクゾクっと背中に痺れるような電気が走る。宏呂里海Δい声は性欲を刺激されるのだ。


「お、起きてるなら返事して下さいよ。もしも僕が包丁を持っていたらどうしてたんですか? 急に触るから、驚いて変な声が出たんですっ」
「お前がそんなドジじゃないって知ってるしな」
「僕の評価、意外と高いんですね」
「そりゃあ、俺の小春だからな」


 そう言いながら宏呂亮蠅背後から前に回ってくる。シャツの隙間から指が入り、素肌に触れてきた。くすぐったくて身を捩ると、尻に硬いものが触れる。


「寝起き、ですね……?」
「なんで分かる?」
「なんでって……」
「これか? これで分かるのか?」


 小春の尻にわざと硬くなったものを押し付けてくる。挙げ句にはぐりぐりと擦り付けるのだから困ったモノだ。


「分かります。もう何年、宏呂気鵑寮は辰鬚靴討襪隼廚辰討襪鵑任后」
「さぁな」
「ほら、今日はあなたの好きな麻婆豆腐なんですから、あんまりひっつかないで下さい」


 宏呂亮蠅鬚匹そうと掴むが、一向に離れていかない。それどころか器用な指先は小春のシャツのボタンをプチプチと外していく。


「ちょ、ちょっと……っ」


「いいだろ? お前、俺が見てないと思って玄関脇にかかってるコートの匂いを嗅いでただろ。しかもうっとりした顔でな」


 思いがけない反撃の言葉にぶわっと羞恥が襲いかかる。色白の小春は項まで真っ赤にして固まった。


「あんなことしてるくせに、止めろって言うのか? このむっつり」
「な、ぁっ……んで、知ってる、ですか……」


 いつの間にかシャツの前ボタンはほとんど外されていた。彼の指先が敏感な胸の先を探し当て、引っ掻いたり捏ねまわしたりして弄っている。そこが弱い小春は、腰が抜けそうになるのを必死に耐えるのが精一杯だった。


「ん? 入り口に防犯カメラを付けたんだよ。しかもドアが開いたら自動録画だ。見るか? お前が俺のコートの匂いを嗅いでるところだぞ」
「や、止めて下さい……。そんなのすぐ消して……ぁんっ」


 片方の手が小春の下腹部へと伸びていく。これ以上されると小春の方も我慢が出来なくなる。しかし昼休みはあと四十分ほどしかない。


「俺が起きていて、お前の行動を見て硬くしたとは思わなかったのか?」


 謂れのないセクハラを受けているような気持ちになる。しかし宏呂琉ι錣狼せちよくて、昼ご飯などそっちのけで今すぐ落ちてしまいたくなった。しかし――。


「こんにちは。叔父さん、いますか?」


 玄関の方から男性の声がする。宏呂鮟派磴気鵑噺討屬里楼貎佑靴いない。


「叔父さん? 玄関のドア開けっぱなしですけど……いますよね?」


 やって来たのは宏呂留っ子である圭祐だ。


「ちょっと、宏呂気鵝⇔イ靴堂爾気ぁ」


 ヒソヒソ声で言うと、肩口に顎を乗せた宏呂面倒くさそうなため息を吐いた。


「ちっ、間の悪いやつだな、圭祐め。平日なのになんでこんな時間に来るんだよ」
「ちょっと、かわいい甥っ子が来たのに、そんな言い方はないでしょう?」


 小春は今度こそ宏呂亮蠅ら逃れ、慌ててシャツのボタンを留め始める。不満げな宏呂頭を掻きながら、腹減った、と呟いた。


(この自由人が……っ!)


 怒鳴りたいところをグッと我慢した。こんな相手でも小春が惚れ込んだ男だ。
 宏呂呂気辰気肇螢咼鵐阿ある方へ行ってしまい、圭祐が間仕切り壁から顔を覗かせる。


「あ、いたいた。叔父さんは今からご飯? あ、小春さん、こんにちは。もしかして僕、タイミングが悪かったですか?」
「ううん。まだ作ってないから一緒に食べますか?」


 麻婆豆腐の素を見せ、にっこりと微笑んだ。実際はさっきまで宏呂飽ι錣気譟⊂蠅┐修硫楽に飲まれそうになるのを誤魔化す笑顔である。


「え、いいんですか?」
「うんうん、圭祐くんの分も作るね」
「おい、圭祐。平日なのにお前、学校どうしたぁ?」

 

 リビングにいる方から、間延びしたような宏呂寮爾聞こえてくる。


「今日は学校の創立記念日なんだよ。僕がサボってると思った?」
「いや、真面目なお前がそれはないだろうと思ったけどな」


 あははは、とリビングから明るい笑い声が聞こえる。小春はホッとして、まずは自分のシャツの乱れをチェックする。


「あ、ボタンが……」


 慌てて留めたボタンは思い切りズレていた。これを見た圭祐は一体なにを思っただろうか。ボタンを留め直し、顔を真っ赤にしながら豆腐を切り、プリプリ怒りながら挽き肉を炒める。宏呂諒だけ脇によけ、圭祐と自分の分を先に作った。


「思い切り辛くしてやるんだから」


 そう呟きながら、小春は宏呂諒を作り始める。調味料入れから四川豆板醤をこれでもかと加えた。ほぼ一瓶だ。いくら辛いのが好きな宏呂任癲△気垢にこの量は堪えるだろう。
 どこでもかしこでも、触ってくる宏呂悪いのだ。少し痛い目を見ればいい、と小春は悪魔のような笑みを浮かべる。


「はい、お昼が出来ましたよ〜」


 にこにこ笑顔の小春は、トレイに器を乗せてリビングへ向かう。圭祐も宏呂眸味そう〜と嬉しそうだ。しかし数秒後、宏呂麻婆豆腐を吹き出した。それを見た小春は、ただただ楽しそうに微笑んでいるのだった。

 

【END】

 


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    2020/04/05 (日) 10:16 | イベント
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